第41回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君(今回男性ニ限ル)は女性との初ベッドイン直前、いか

なる挙動をとっているだろうか。彼女は濡れた肢体をバスタオルにくるみ、今ま

さにバスルームから出てきたところだ。期待、不安、焦燥、切望、準備万端、気

合充分、爆発寸前…とさまざまな思いが交錯するベッド上での姿勢を激しく問う。

■報告一



へー、こういうとこよくくるの

先にベッドに入って
泰然と女を待て

 初対面の女との一夜では、策に溺れて不信感を与えるよりは凡庸な仕草で安心感を演出したい。SEXに手慣れた包容力のある男がイメージ。ベッドに入り「こっちへこいよ…あたためてやるぜ」と言わんばかりの泰然ポーズで待つべし。勿論、ゆったりしすぎて寝てしまってはOUT。(中)

■報告二



おまんたせしました〜

腰かけ喫煙体勢で
待ちわび感を主張

 最大限の快感を要求する男性としては、ベッドに腰かけ、貧乏ゆすりで煙草をふかすのが当然。待ちわびたイライラ感を醸し出し「これだけ待たせたんだからいい仕事してくれんだろーな」という暗黙の主張で相手に負荷を与えるのだ。相手をプロと見込んだ上での大人の選択である。(曽)

■報告三



そんなに固くならなくていいのよ

ベッドに
正座して
誠実さを
吐露せよ

 虚勢を張る必要はない。経験不足で緊張しているならそれを素直に出せばいい。姿勢を正して「どうかよろしくお導き下さい」と誠実に拝めば、相手の女性も「ヨッシャ、導くか」というイキな姉御心を抱いて接してくれるはず。素直に頭を垂れつつ下半身の頭は垂れない…これだ。(戸)

■報告四



あれ〜どこいったのかな〜ツンツン

大人の男女ならではの遊び心を演出

 「挿入するだけのSEXが面白いだろうか…SEXには遊びがなければ」との基本認識を持つ貴男なら、シーツに隠れて彼女に探させる隠れんぼエンタテイメントの導入を。どう見てもそこに隠れているとしか思えないのをその気になって探す。それが成熟した男女の遊びというものだ。(福)

■報告五



鉄道員…ぽっぽや?

準備万全を期し
駅員風に指差し確認

 照明、カーテン、BGMのスイッチ、コンドーム、マットレスの弾力性、非常時脱出口…と、情事の前に男性がベッドで確認しておくべき事項は数多い。彼女のシャワー時は「ティッシュよーし!」と指差し確認する唯一のチャンスだ。鉄道員の慎重さなしに「発射オーライ」はないと知れ。(明)

■報告六



随分なハシャギっぷりだこと、
ルパン

喜びを全身で表す
ジャンピング待ち

 仮に、ダメもとで声をかけた峰不二子ばりのダイナマイトSEXYが意外に好感触でたった今キミのためにシャワーを浴びているとしたら? 男なら「キャッホ〜ッ!」と飛び跳ねるのが当然だ。ガキのように喜ぶ男を盗み見る手には愛砲・ブローニングM1910…不二子はそんな女だ。(柳)

■報告七



も〜うっちゃりはなしね

鬼気迫る立ち合いで
女をぶちかます

 SEXは男と女の真剣勝負である。勝つか負けるか。専門家の指摘する通り、雌雄を決する分かれ目は一瞬の立ち合いにある。ベッドで両の握り拳をついて充分な前傾をとり、シャワー上がりで油断している相手を気迫でにらみつければ、この勝負いただき。スパパパパーンとぶちかませ。(宮)

■報告八



なにやっとんじゃワレ!

本番前は入念に
シミュレーションを

 一流アスリートは試合前の入念なイメトレを欠かさない。一挙手一投足をリアルにシミュレートすることで本番での成功がぐっと近づくのだ。SEXも同じ。枕を女体に見立てて動きを予習しておけば、本番の性交でも成功は同然。ただ相手に見られると気まずいのでくれぐれも内密に。(酒)

■学会主宰より総括

キメるか、笑かすか

それとも勝負に出るか

 ここでは各論説の熱いパトスに満ちた主張やこだわり、ないしは熱にうかされてつぶやくうわごとかとも見まごう1人よがりの独善的態度等に留意して論評を加えていくこととする。

 報告1へー、こういうとこよくくるのは、凡庸な顔をした男が凡庸な姿勢で待っていても、「手慣れた包容力のある男」と判断されるかどうかが疑問。ただの凡庸なポーズと見過ごさるのがオチだろう。

 報告2おまんたせしました〜は明らかに風俗店と間違えている誤った言説。

 報告3そんなに固くならなくていいのよは、放置プレイを好むM男と勘違いされる可能性大だ。

 報告4あれ〜どこいったのかな〜ツンツンは遊び心の導入に工夫を感じるが、相手がノーリアクションだった場合の自己フォローを考えると哀しさが増す。

 報告5鉄道員…ぽっぽや?は一体なにをしにきているのだ?

 報告6随分なハシャギっぷりだこと、ルパンは、相手が峰不二子ならばその態度もわかるが、でも結局、ダマされて今週もエッチはナシよーんになるのではとの不安がつきまとう。

 報告7も〜うっちゃりはなしねは、なぜか捨てがたい魅力を放つ。気迫を込めた立合いで一気勝負に出る…この姿勢に漢(おとこ)を感じるからだろうか。

 報告8なにやっとんじゃワレ!は枕でイカないようにな、と言っておく。

 というわけで今回の推奨スタイルは、昔ながらの円形回転ベッドならばなおのことハマるであろうも〜うっちゃりはなしねとしたい。以上。

■「学会うらばなし」と呼ばれていたコーナー

●もっと読者のことを考えた方がよいのではないか、との自問自答から、今回の報告名には従来とは一線を画す視点変更がなされている。スタイルを実行する主体からの視点で名付けられていたのがこれまでのネーミングの常道だったが、それはあまりに独善的に過ぎるとの批判が根強かった。今回は実行主体を見る他者の視線(=読者の視線)から名付けられているわけで、結構「読者にやさしい」ネーミングではないかと学会内ではもっぱらの評判である。学会的には「ネーミング理論における三人称逆スライド方式」と呼ばれるこのスタイルがいつまで続くかは不明である。というより、今度はいつページを更新できるかがなにより不明である。


研究ユニット●94年発足。生活上のグラマラスな題材について精力的but投げやりな探求を行う。「サッカー五輪予選の香港戦を観に行く」との主宰の言を「香港に行く」と捉えた副宰は先鋭的主宰批判を各所で展開。後日、日本での試合と判明した。


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