〜第87回テーマ〜
■学会主宰より前口上 |
生活様式学会へようこそ。
諸君は居酒屋やビアホールなどでジョッキに注がれた生ビールを飲む際、
いかなるスタイルを用いているだろうか。
ぷっはァ〜たまらんうんめェなぁも〜などと言いながら飲んでますが、
とかいうのではなく、今回はジョッキの持ち方にこだわって考察を重ねてみたい。
そのためにもまずは一杯。
ぐびぐびぐび。
げふっ。
■報告一 |
力強さに満ちあふれた握りこぶし式スタイル ビールは力強くグーッとやるのが一番。取っ手に指4本を突っ込んでグーで握る持ち方が最もグーだというのは、ぐうの音も出ぬほど当然の事実だ。ビール三
大発明の一、酵母純粋培養技術を開発したデンマークのブリュワリーに敬意を表し、グーでグーッと乾杯を。
■報告二 |
上下方向の安定を増すための受話器スタイル グーで握る持ち方では上下方向の安定感が物足りないとお嘆きの貴兄に最適なのが、指3本を取っ手に通して握りつつ、親指と小指で取っ手を上下からサポートする持ち方。絶妙な安定感が付加されるほか、脳内でティロリロリーンと絶妙な効果音が鳴るので楽しい。
■報告三 |
腹を冷やさないための手のひら密着スタイル キンキンに冷えたビールは確かにうまいが、冷たいものを急に摂取すると腹がくだるのが世の常。下痢体質の飲者としては、取っ手に手を深々と差し込み手のひらをジョッキに密着させる温度上昇対策をとりたい。所謂しみじみドリンキングで、唄い出すのさ麦唄を。
■報告四 |
人類として生を受けた喜びを確認するために 中指と薬指で取っ手を握り、親指、人差し指、小指をジョッキに押しつけるようにして持つ。著名な妖怪人間の手を意識することで、幸いにも人間に生まれついた自分を祝う気持ちを掻き立てよう。今では駆けつけ三杯は流行らない。祝宴ではおっつけ三杯が常識だ。
■報告五 |
炭酸が抜けるのを防ぐためのジョッキ覆い型 ビールにとって、炭酸は非常に重要な要素。当然店側は最適な泡量に気を遣って注ぐべきだが、ビールを飲む側はジョッキを手で覆うようにして持つべきだ。自分の肉でフタをすることで炭酸のヌケを防ぐわけである。ちなみに、つまみにはブタ肉が最適と言われる。
■報告六 |
かよわい外見イメージの裏のムダ毛隠し戦略 ビールは飲みたい、でもかよわい乙女の印象を崩すのは時期尚早。そんな場合は両手持ちだ。取っ手を握りつつ、もう一方の手の指先を横からそっとあてがう。この際、手首がジョッキ側にくるように握ると自然に脇が締まるので、腋毛処理を忘れた日でも安心らしい。
■報告七 |
不自然な雰囲気を作り会話のきっかけを提供 コミュニケーション促進の観点からは、取っ手を普通に握った状態からジョッキを180度回転させて逆ハンドで飲むのが好ましい。一見普通だがよく見ると不自然なポーズを実行し、相手に会話のきっかけを提供するわけ。理想の飲ミュニケーション像はここにある。
■報告八 |
もはやスーパードライの時代は終わった。これからはスーパーウェットだ。手首をねじって取っ手を天地逆さまに握り、そのまま持ち上げるのだ。ほとんどこぼれるからイッキ飲みでもアルコール摂取量は少ないし、ビールもしたたるいい男になれるのが嬉しいっす。
■学会主宰より総括 |
暑い夏の夕暮れのジョッキとワタシ
酒が考え出すものは何もない、しゃべり散らすだけだ−−とはシラーの言であるが、何かこう
しらーっとする言葉である。悪いけど、こういう方とは飲みたくない。そっちもか、そうなの
か。さて、総括である。報告1【ビールといえばカールスバーグー】の報告内容は悪くないが、少々しつこい。眠く
なってきた。ぐーぐー。報告2【アメリカンビアホールダイレクト】はややテクニックが強まったかたち。しかし無意識に宣伝活動をしてしまっているのは片腹痛し。
報告3【麦酒はぬるめの手燗がいい】はどう考えてもやはりまずそう。
報告4【おっつけ人間ベム】は30代後半以上限定スタイルではないのか。妖怪人間たちの指が3本だったことなど、今や過去の歴史の闇の中である。
報告5【うまいものには肉ブタをしろ!】は、そこまで炭酸放出を嫌うならフタをした上にストローで飲んではいかがかと提案したい。
報告6【脇締めダブルハンド乙女の秘密】はかわいいと見せかけて、実は密かに乳寄せによるフェロモン放射ももくろんでいるものと思われる。だまされてはいけない。
報告7【気づいて! 逆ハンド】は新鮮だ。だからどうしたという言葉が喉元まで出そうになるも、微妙にファニーでストレンジなテイストが不可思議な魅力を放っている。
報告8【新発売アサヒスーパーウェット】は「優勝したらネ」とだけ申し上げておこう。
というわけで今回の推奨スタイルは、地味ながらも相手に微妙な違和感ビームを送りつけ、酒を席のほのぼのとした雰囲気を盛り上げてくれるに違いない【気づいて! 逆ハンド】としたい。以上。
■学会副宰よりあとがき |
●ぬ、ぬゎんと、「現代生活様式学会」の単行本パート2刊行が決定! いやあ、世の中わからないものですな…。ということで夏向けの研究をあわてて更新!