第42回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君はマクドナルドのビッグマック(280円)と相対する

とき、いかなる方法でそれを食しているであろうか。なにしろ相手はでかい。大

の大人ですら「さてどうしたものか」とその威容を見上げて溜息をつくほどだ(そ

こまではでかくない)。ひと思いにいくかチマチマいくのか、選択のときは今だ。

■報告一



もぐもぐマグワイヤン

真っ向から
かぶりつく
王道スタイル

 ハンバーガーの王がビッグマックだとすれば、動物の王は勿論人間。各々の種族を代表する王同士の戦いに小手先の技術は不要だ。ただ真っ向からぶつかるのみ。本能に従って口をかっと開け、一途にもぐもぐ食うべし&食うべし。ホームランの王マグワイヤもCMでこう食ってるし。(下)

■報告二



Mac.lzh

口に入る
サイズまで
容量を圧縮せよ

 パソコンのデータが大きすぎてフロッピーに入らない場合、データを圧縮して容量を小さくするもの。同様に、ビッグマックが大きすぎて口に入らない場合は、ビッグマックを圧縮して容量を小さくすべき。天地プレスで染み出る肉汁等をこぼさぬよう包み紙をあてがうのが正式だ。(服)

■報告三



リセエンヌのちぎり

適当な大きさに
ちぎって
小さな口へ

 ビッグマックという壮大な食物と相対する場合、正面からがっぷり四つの戦いを挑んでも無謀なだけ。大口開けて食べ物にしゃぶりつく下品な空腹女とレッテルを貼られてFIN=おしまいだ。洗練されたフランス女性を目指すなら、自分の口に合うサイズにちぎりながら上品に食そう。(斉)

■報告四



ビッグマック定食

パーツごとに
分解して
一つずつ食す

 バンズ、レタス、肉、チーズ…。ビッグマックを構成するパーツは、どれも最高の素材を使用した極上食品のはずだ。世が世なら単品として主役を張ってもおかしくないエース級だ。ならば、各々を一度分解し一つずつ吟味しながら食べるのが礼儀。十把一からげ扱いは非礼と知れ。(奥)

■報告五



上を向いて食べよう

こぼし対策完備で
商品100%摂取を

 ビッグマックを食べる際に気になるのは、オニオン、ピクルス等の小粒内容物や、他のバーガーには入らない特製ソースがこぼれやすいことだが、顔を仰向けにして食べれば、たとえこぼれても結局は口中にイン。280円分全てを摂取せんとする一流消費者の食べ方はこれしかない。(山)

■報告六



フォーク&ナイフ、プリーズ

常に紳士で
あるための
ディナー形式

 紳士たる者は生活の全てにおいて紳士たれ。この祖父の教えに忠実であるためには、ビッグマックもフォーク&ナイフを駆使して食べるのがベスト。心をこめて平身低頭嘆願すれば、店員氏も意気に感じてモーニングセット用のフォーク&ナイフを貸してくれるかも。くれないかも。(森)

■報告七



マック・ザ・グレート誕生

ポテトをプラスで
ゴージャスな味を

 より実状に即した食べ方を模索するなら、バリューセットに関する言及が欠かせない。そう。ここには、ただでさえBIGなビッグマックをさらにゴージャス化する余地がある。セットのポテトをバンズに挟み込んで食うのだ。オギャー。BIGを超えた超最高級バーガーの誕生である。(西)

■報告八



ストローよ、バーガー界に風穴を!

バラバラ化を防ぐ
ストロー串刺し策

 食べてるとビッグマックがどうしてもバラバラになって悲しい…。そんな心優しいあなたには、ストローで本体を串刺しにして食べる新スタイルをこっそり教えちゃお。焼き鳥感覚でパクつく面白さは勿論、最後ストローに詰まった肉やパンを吸い込むオマケもアリ。ジュルッとね。(久)

■学会主宰より総括

ビッグマックという山

その征服をめざす人々

 ここでは各論説の信頼性あるいは詐欺性、およびそれはともかくとしての思わずヨダレが出そうなそそる感等に留意して論評を加えていくこととする。

 報告1もぐもぐマグワイヤンは、待てよ、動物の王はライオンではないのかとふと疑念にとらわれた。あれは百獣の王だったか、しかしそれなら女王は誰だ等、余計なことに気がいってしまい、却下。

 報告2Mac.lzhは圧縮されたビッグマックの気持ちを想像するだに窮屈で可哀想だ。ビッグな彼は潰されるのを望むだろうか。

 報告3リセエンヌのちぎりは言語道断。わざわざちぎり食うなら普通サイズのバーガーを2つ食べよ。

 報告4ビッグマック定食の思想は明確だ。しかし、そもそもバンズや肉を十把一からげにして食べるというのがハンバーガーの思想であるはず。となればやはりお門違いだろう。

 報告5上を向いて食べようはむしろモスバーガーで試してみたい。

 報告6フォーク&ナイフ、プリーズは英国ではむしろこちらが主流かとも思えるが、ビッグマックをスパスパ切るにはかなり切れ味秀逸なナイフが必要だ。

 報告7マック・ザ・グレート誕生は新発想。あのビッグマックをさらにデコラティブにするという逆転の発想に度肝を抜かれた。

 報告8ストローよ、バーガー界に風穴を!は焼き鳥とビッグマックではスケール感があまりに異なる。

 というわけで今回の推奨スタイルは、まさにバリュー感覚満載な様が強烈だったマック・ザ・グレート誕生としたい。以上。

■「学会うらばなし」

●今回、報告絵のタッチが過去のものと変わったな、と気づいた読者の目は節穴ではない。今まで嬉々として絵を描き起こしてきた副宰が、「もしかして俺は他の二人よりも重労働を余儀なくされているのではないか。ホームページの作業もやってるし。でもフロム・エー連載分のギャラは一緒だし…」と気づき、突如として任務遂行を放棄したため、かつて漫画家として作品を発表したこともある事務員にお鉢が回ってきたのだった。次回はついに、長い間ベールをかぶっていた主宰の画力が明らかになる予定! ただ、ホームページ担当の副宰のやる気がめきめき急降下しているため、更新がいつされるかは未定…。


研究ユニット●94年発足。生活上のグラマラスな題材について精力的but投げやりな探求を行う。約2ヶ月ぶりに扶桑社の碇氏(アムロ母の手記や『笑う犬の生活』を担当)と単行本化の打ち合わせ。ちなみに彼は本誌編集部の村上氏と似ているのだ。


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