第90回テーマ

学会主宰より前口上

生活様式学会へようこそ。
諸君はチューチューアイスを食べる際、
いかなる手つきや口つきでもってそれを平らげているだろうか。
夏が来ると、いや、夏が去っても無性にチューチューアイスにむさぼりつきたくなるというチューチューマニアな御仁はもちろん、
チューチューアイスなんて言葉久しぶりに聞いたネという金髪ギャルまで、
レッツ・チュー!

報告一

TSUMAMI

できるだけ溶かさないための指先もみもみ式

 指で容器をつまんでもみもみし、中のアイスを少しずつ押し出して食うのが一番だろう。チューチューアイスは凍ったまま長く味わわないと損という考えにとまどう弱気な僕にとっては、熱い人体と容器との接地面積をなるべく小さくすることこそが至上命令なのだ。


報告二

夏の牙王

固体の食べものに礼を尽くす噛みつきの美学

 アイスが固体である以上、歯を使って食らうのがマナー。猛獣が牙をむくようにガブッと噛みついてチューブをひっぱり抜けば、歯でそぎ落とされたアイスが口中へ。真の猛獣ならチューブごと噛み切るところを絶妙な力加減で抑えるのが、生物の王たる人の長所だ。

報告三

押し出してチューチュー山の負け

風物詩としての矜持を保つための底プッシュ

 チューチューアイスは今やところてんと匹敵する夏の風物詩なので、ところてん感覚で底からぐぐと押し出して食うのが気分。しかも押し出しは相撲の決まり手。「どうですか、今の一番」「いやぁ一気の押しが見事でした」などと夏場所気分で一人ごつにも最適だ。

報告四

バキューム娘→氷の微笑

二種類の味わいを享受する貪欲吸引スタイル

 くわえる。そして、吸い上げる。強く。頬がこけるほど激しく。こうしてまず最初に甘い液だけを味わい、残った氷をその後で食べる。ジュースと氷、二種類のお楽しみが味わえてニヤリというわけだ。チューチューアイスって、「ズポッズポッアイス」が本名らしい。
 

報告五

ジュース

溶かしてからジュースとして飲む待機型戦略

 快感界の鉄則の一つに、じらされるほど度合いが増すというのがある。この原理を適用するならば、チューチューアイスを手でぎゅっと握って溶かし、冷えたジュースにしてゴクゴク飲むのがどう考えても正統。カウントダウンはごくごくゆっくり、と肝に銘じたい。

報告六

冷凍タラレバガニ

切り込み入れて割ってほじくる高級化大作戦

 もしこれがチューチューアイスではなく高級冷凍タラバガニだったら……と仮定、ナイフで切り込みを入れてパカッと開いて身をほじくり出して食うと、一気に場が高級化していい。勝負の世界に「たら」「れば」は禁物だが、我々は勝負の世界の住人ではないのだ。

報告七

チューイングアイスあり(ます)

名前の本来の意に則すためのガムっぽい食法

 思うに、チューチューアイスとは、「チューチュー吸うアイス」ではなく、「chew chew ice」、即ち、「噛むアイス」という意味なのであり。とすれば、チューブごと口に入れ、ガムのようにくちゃくちゃ噛み、しみ出す中身を味わう食べ方こそ相応しいのであり

報告八

永久氷菓説

何度も冷たさを味わうための容器なめなめ案

 氷菓の存在意義は冷たさにある。チューチューアイスには容器がある。ここから導かれるのは、容器を開けずに舌や唇でなめ回し、中身が溶けたらまた凍らせて何度も冷たさだけを満喫するアイスノン方式。なおこの氷菓、フレーバーはキンツバならぬマイツバ味だ。

学会主宰より総括

チューチュー……アイス……かいな

 狩猟のルール、それは自然の掟以外にはない−−とはヘミングウェーの言であるが、チューチューアイスを食べる際のルールもまた本来、自然物理の法則以外にはない。でも「チューチュー」と名づけられるとつい吸ってしまうのも人のサガ。さて、総括である。

 報告1TSUMAMIはしごく正論。ただ、凍ったまま味わいたいと願っても、この方式ですら最後はいくばくかのジュースが残るよ、と注進申し上げたい。

 報告2夏の牙王の野性的テイストは魅力的だが、その猛獣とは実はネズミのことなのではないか。チューチューだけに。

 報告3押し出してチューチュー山の負けは、チューチューアイスが好きなのか、ところてんが好きなのか、それとも相撲が好きなのか?

 報告4バキューム娘→氷の微笑は、ちょっとお下劣。

 報告51、2、3、4、5、6、7、8、9、ジュースには当然のことながら、「最初から凍らせるなよ」と言いたい。

 報告6冷凍タラレバガニもまた、タラとかレバとかカニとか別のものがお好きなようだ。

 報告7チューイングアイスありもまたまた、ガムがお好きなようだが、それにも増してチューブごと口に入れてガムのようにくちゃくちゃ噛むいう恐るべきアナーキーさが刺激的。チューチューアイスはchew chew iceなのだという強引すぎる解釈にも驚愕。

 報告8永久氷菓説は、あくまで仮説の一つとして受けとめておこう。

 というわけで今回の推奨スタイルは、チューチューアイスに対するあまりにもアグレッシブな取り組み方が思わぬ感動を生んだチューイングアイスありとしたい。以上。

学会副宰よりあとがき

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