第33回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君は男女で自転車の二人乗りするとせぇやあがき、あーじゃこーじゃ言ったって通用しーせんて、どんなんな体位を取り合っとりゃがるきゃあも。そのステャアルこそは、二人の心をシンボリックに具象化した愛のかたちに他なれせん。なお、このばやぁの二人乗りは河原を想定しているもんだでよぉ、道交法インチキには当たれせん。

■報告一


■横向き脚閉じ乗りは乙女の基本原則

つぼみ

 恋人だったってにゃあ男に女子がホイホイ脚を開いてはいけーせん。ネヴァーでにゃあきゃぁ。二人乗りだったってしっかと脚を閉じるのが乙女の基本原則。胴に回す手を一本に限定して身体の過密着を防ぐのも大事でにゃあきゃぁ。今はまんだつぼみに過ぎぬ二人の恋が花開いたとき、彼女の脚は自ずと開かれるはず。祈・満開。(藤)


■報告二


■両手を胴に回す密着型なら安定度大

おみゃあさんのシートベルトになりたゃあ

 二人乗りでのいっちゃんの課題はふらつきでにゃあきゃぁ。元々ケッタは一人乗車を想定しとりゃがるため、これは避けがたゃあ問題だて。ならば二人が一人になりゃぁええではにゃあか。両手を男子の胴に回し、体を密着さして一体化を図るもんだでにゃあきゃぁ。乳房接触ちゅう危険要素はあるが、安定感は飛躍的に増加するちゅうこったぎゃあ。(三)

■報告三


■好騎手はベルトをつかんで馬を操作

恋の手綱

 どんなんな優駿も、優れた騎手がいなけりゃぁ単なる家畜にすぎーせん。二人乗りの男女の関係もおんなじでにゃあきゃぁ。男は馬で女はヂョッキー。女がつかんだベルトの案配で方向やらなんやらを指図したることがスムーズな運行を出来てまうんだわな、ほれがよぉにするもんだでにゃあきゃぁ。馬体にムチが入ったら、二人の恋路も最終コーナーに突入、か。(永)

■報告四


■めっちゃんこええ眺望を約束する立ち乗り

パノラマ王女と下僕ギヤ

 男には汗水かかして働かせ、てみゃあは高みの見物を決め込む…開闢以来培われてきたこの女性的行動パターンが、二人乗りでは如実に顕在化するちゅうこったぎゃあ。荷台にすっくと立ち上がり一人で遥かな眺望を満喫する様子はまさにわがまんまクイーン。忠実な下男として動力部になりきる男が不憫でにゃあきゃぁ。(秋)

■報告五


■背中ごしの愛が示す自立した伴侶像

キッスは背骨で

 常に互いに依存しーせん大人の関係どったゃあちゅうクールな二人なら背中合わせステャアルにキマリ。後方はわしが見るでおみゃあさんはしっかり前方を見て、と完全なる分業体制を確立。相手への信頼感を軸に据えた女性の真の自立はここからしか始まれせん。愛を語るのは口ではにゃあ。背でにゃあきゃぁ。(相)

■報告六


■ホールド技で一方的運命共同体宣言

股挟み束縛娘

 軽薄にパートナーを乗り換えるのは合っとる恋愛の形とは到底言えーせん。ま、いっぺんこの男でいくと決めたなら、二人はまー運命共同体。てみゃあの腕と足を思いきりからみつけ、相手の自由を奪ってしまおう。わしはおみゃあさんを離せせん。わしはおみゃあさんを逃がせせん。転ぶときは一緒。死ぬときも一緒。(中)

■報告七


■こぐのは包容力に溢れた後ろの女性

ボセイドン・アドベンチャー

 従来の役割分担に縛られるなかれ。価値観が多様化した現代の男女は、個々人の特性を活かす乗り方を採る必要があるちゅうこったぎゃあ。女の方がデカて体力的に優れるばやぁは女がこげばええのでにゃあきゃぁ。ちょこんと前に腰かけた男との組み合わせはまるっきし実の親子。母性で彼を包み込み、大冒険へ出発でにゃあきゃぁ。(名)

■報告八


■二人で完成さす愛のバランス芸術

Love Style 09:10

 せっかく特別な人と乗るのに普通の乗り方なんて淋しいもんだで、道行く人に二人のラブハーモニーを見せつけちゃお。女子が手足で荷台にぶらさがったら男子は逆シャアドにハングオン。時計の9時10分の針位置を心がけるとええみたゃあ。観客にキミェの笑顔を投げてまうでよぉのは芸人の基本的心得よ。(井)

■学会主宰より総括

ケッタ二人乗りにみる「愛のかたち」の真実

  ここでは各論説の正当性および信憑性、ないしはみずでの怪しい理屈を糊塗せんがための言い訳がましさやらなんやらに留意して論評を加えていくことちゅうことにしてまう。

 報告1の【つぼみ】は乙女の閉じられた脚をつぼみと表現する古典的レトリックに心奪われそうになるも、なんちゅうか、おみゃあさんたらがよう言わっせるところのコギャル風情が跋扈する現状を鑑みると暗澹たる気分になるのが泣けてくるでかんわ。

 報告2の【おみゃあさんのシートベルトになりたゃあ】は安全性に着目した論説。ただ乳房については衝突安全ボヂGOAと結び付けて論じる視点はなかったのかとの物足りなさが残るちゅうこったぎゃあ。

 報告3の【恋の手綱】の一点の曇りもにゃあ理屈をこねくり回いてかんこうするっちゅう話展開は見事。けどがよぉ、おみゃあさん、ええきゃ、男としては種馬気分。

 報告4の【パノラマ王女と下僕ギヤ】はきょうびよく見かける光景。男女のSM的力関係に不快感を覚える向きもよおーけなと思われるが、ここで描写されてまいやがった高みの見物を決め込む女性の姿はあまりにも勇壮果敢。理不尽なほどの感動に心を打たれた。

 報告5の【キッスは背骨で】は背骨が痛そう。

 報告6の【股挟み束縛娘】は男女の心中ステャアルと間違えとりゃがるもんだではにゃあか。

 報告7の【ボセイドン・アドベンチャー】にも奇妙な味があるちゅうこったぎゃあ。難点は和田アキ子級の女性が必要であること。

 報告8の【Love Style 09:10】は、ひたすらに「本当にできるもんだでゃーなも」と念を押したゃあ衝動に駆られた。

 ちゅうわけでよぉ、今回の学会推奨ステャアルは、現代的男女の二人乗りは変態に通ずと大胆に分析してみせた【パノラマ王女と下僕ギヤ】としたゃあ。以上。

■説名決定までの道のりなど

●報告一の説名では、菜の花咲き誇る河原の二人をイメージした【花の子ぱすてるんるん】【花盗人】、春の気まぐれな風を意識した【たなびいて…髪】【4月の風はやさしくて】【春風ちりりん】、小泉今日子のかつての名曲「こがらしに抱かれて」を下敷きにした【そよ風に吹かれて】と、数々の候補名が乱立したが、何よりも青春時代特有の「淡さ」を尊ぶ学会員の共通認識が確認された結果、【つぼみ】に決定。より低年齢層向けに「むすんでひらいて」をモチーフに据えた【つぼんでひらいて】が議場をにぎわすことはなかった。
●報告二では、手綱のイメージまではすぐに決まったものの、自らのランドセル経験を自慢したがって【恋の手綱はコードバン】を推す副宰と、【恋の手綱】でいいとする主宰陣営が激突。数的不利を悟った副宰が「じゃ、クロコダイルでもオストリッチでもいい」と譲歩したものの共感を得られず。
●報告三はものの五秒で決定。
●報告四は一旦【荷台からのヘアチェック】から進化した【もうつむじしか見えない】で満場一致の採択を得たが、土壇場で「これではあまりにも眺望感に欠ける」との物言いがつき、【パノラマ王女と下僕ギヤ】に急激な路線変更。「あの乗り方って女がえばってるみたいでイマイチこのましくないよね」という当初の学会見解を覆す結果を生む主因となった。
●報告五はヴィーナスの往年のヒット曲「キッスは目にして」より。学会員たちの年令がうかがえる。
●報告六は少し筋違いだがまたも小泉今日子「艶姿ナミダ娘」より。学会員たちの年令がうかがえる。
●報告七は「ポセイドン・アドベンチャー」より。別に映画を高く評価したわけでも低く評価したわけでもなく、「ドン」の持つどすこい感に学会員たちがほれぼれしたのが採用に直結した。
●報告八は【Love Style 10:40】→【Love Style 08:10】→【Love Style 09:10】と時刻が二転三転。


研究ユニット●94年発足。生活上のナーバスbutグラマラスな30題について精力的but投げやりな研究活動を行う。毎回図案作成のために学会員がモデルを務めとりゃがるが、今回は【Love Style 09:10】の試技があんばゃあよぉいけせんといて、体力の限界を理由に主宰が引退を匂わす一幕も。


名古屋弁化には名古屋弁コンバータ「だもんで信長」を利用させていただきました。

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