〜第90回テーマ〜
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■学会主宰より前口上 |
生活様式学会へようこそ。
諸君はもしも自分がねずみ小僧となって手ぬぐいで顔を隠すとしたら、どのようなほっかむり方をするだろうか。むろん、ねずみ小僧にはトレードマークというべきほっかむりスタイルがある。が、せっかくねずみ小僧を現代によみがえらせるのなら、ここはひとつオリジナリティー＆ニューセンスあふれるやり方を考察してみたい。そうです、あなたも手ぬぐいを用意して、今すぐほっかむってみるでチュー。
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■報告一 |
先達が愛したトラディショナルな鼻下しばり 江戸の義賊の正統な継承者を自負するなら、頭を覆って鼻の下で結ぶベーシックなかぶりざま以外に選択の余地はないはず。なぜならそれは、先代が愛した伝統様式であり、ねずみ科のほ乳類のひげに一番忠実な様式でもあるから。ほっかむりの好みは遺伝する。
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■報告二 |
アゴの下で結べばお洒落な頭巾テイストに お洒落な中高年女性を自負するなら、頭を覆ってアゴの下で結ぶ頭巾型以外に選択の余地はないはず。かつて一世を風靡した「真知子巻き」っぽいだけでなく、いにしえの防災頭巾を思い出せて懐かしさ満点。同年代の仲間と昔話で盛り上がりすぎないようご注意を。
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■報告三 |
匿名性と防寒性を追求した覆面マスク作戦 ほっかむりの第一の目的は顔を隠して誰だかわからなくすること。だから、手ぬぐいで顔全面を覆って目鼻口の部分をくり抜く覆面レスラー型こそが最高なのだ。防寒性も高く、冬の寒さ厳しい江戸で暮らした本家ねずみ小僧（天保三年没）もさぞ愛したに違いない。
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■報告四 |
本人特定を極度に恐れる人用の目元しばり 罪人を捕らえる仕事を目明かしと呼ぶように、容疑者写真の目を黒く消すように、本人特定で最重要なのは目だ。目を公衆にさらすようでは一流の怪盗とは言えない。プロは手ぬぐいで目を隠すべし。「MATRIX REVOLUTIONS」のネオのように心眼で見るべし。
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■報告五 |
世界的人気を狙うための西部劇風三角巾 いかんせんドメスティックなねずみ小僧人気を高めるために、世界を見据えた戦略が必要ではないか。即ち西洋風味。西部劇のガンマンのように、▼に折った手ぬぐいで顔の下半分を覆うのだ。和と洋の要素が顔上で出会ったとき、ねずみ小僧人気は太平洋を越える。
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■報告六 |
不意の歯痛に襲われても安心の頭上しばり 手ぬぐいをアゴから上に伸ばして頭上でしばるべき。見た目が飛躍的にかわいくなるだけでなく、氷嚢を収めて頬にあてやすいから、不意の歯痛に襲われても安心なのだ。ねずみ小僧ともあろう大怪盗が、虫歯で盗みをあきらめた、なんてまずいでしょ、やっ歯し。
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■報告七 |
口に手ぬぐいを詰めれば別人に変身可能！ 容疑者がまったく不明なよりも、間違った容疑者情報が広まった方が、己の捕まる確率は下がる。この冷徹無比な計算から導き出されるのは、手ぬぐいを口内に詰めて頬を異常にふくらませ、別人に見せるプチ整形法。贋顔を見せて真顔を隠す逆説テクをご堪能あれ。
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■報告八 |
ほっかむりっていざやると結構邪魔くさくて、とお嘆きの泥棒諸兄に朗報。もみあげと頬ひげと口ひげと髪をよく伸ばしてつなげればほっかむりに見えることが証明されたのです。布の乱れを気にして注意散漫になる心配はもう解決。いま、泥棒ひげがアツい＆黒い！
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■学会主宰より総括 |
最強にイケてるほっかむりはコレだ！
嘘つきは泥棒の始まり──とは古くからあることわざだが、つまり逆を言えば人や世を
あざむくことこそ泥棒の本分である。ほっかむりはそのためのツール。天下無双のほっか
むりスタイルで見事、退屈な世間をあざむくべし。さて、総括である。報告１【発現！ねずみ小僧遺伝子】の鼻下しばりは確かに伝統的で粋だ。が、弱点は鼻孔をふさがれて口呼吸を余儀なくされる点。ハァハァ息苦しいので、元祖ねずみ小僧も本格活動中は別スタイルだったと勝手に推察。
報告２【紺ずきんちゃんご用心】は、自分はお洒落な中高年女性のつもりでも、人様からは妖怪ねずみ女（男性ならねずみ男）に見えてしまうかもしれないあたりがどうも。
報告３【デストロイヤー1832】は、現代的見地から言えば露骨に強盗っぽい。義賊には不向きデス（トロイヤー）。
報告４【目隠しねずみレボリューションズ】は見えるのか。公衆からはそりゃあ目は見えないだろうが、アンタの方は心眼とやらで本当に見えるのか！ ほらそこ、壁ですよ。
報告５【荒野のマウス・キッド】はいかんせん西洋の猿ぐつわ、いやさ、猿真似、じゃなくて、ねずみ真似？
報告６【盗っ人は歯が命】には「歯ぁ？」というリアクションを。不意の歯痛に悩んでいる人は歯医者に行ってください。
報告７【こちらねずみ整形外科】は奇っ怪だ。見た目からして異様でかえって目を引くばかりか、口の中に手ぬぐいを詰め込んだような物言いしかできなくなること必至。
報告８【人呼んで、リアル泥棒ひげ】は一転、秀逸。この軽快感、このさりげなさ！ これなら普段から密かにねずみ小僧を気取って生活することすら可能だ。
というわけで当学会の推奨スタイルは、ひげさえ生やしときゃ手ぬぐい、いらないじゃん！ という真理を導き出してしまった【人呼んで、リアル泥棒ひげ】としたい。以上。
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■学会副宰よりあとがき |
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オ・ネ・ガ・イ！
●ちなみに今回の「ほっかむりのやり方」は明治座の公演パンフレット用に掲載されたものでーす。