第36回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君はクソゲーをプレイするとき、いかなる姿勢で臨むだろうか。「いやあダラダラやってます」とかいう姿勢の話ではない。純粋にプレイ時の手や足や体の位置関係あるいは状態を問うているのだ。クソゲーとは苦行だからだ。苦しくて辛くてイヤーンなときどんな姿勢が有効か。それが、解である。

■報告一

■睡眠への移行がスムーズな仰向け型

真夜中のラッコ族

 頭はソファ等にもたれ、コントローラーはラッコ式に腹に載せ、あとはズベ〜ッと重力に身をまかそう。これならカロリーの消費量が少なく、相手を見下ろす蔑視ビームを浴びせやすい。人間様との主従関係をクソゲーに叩き込むのだ。眠気で意識が遠のきやすいのもグー。グーグー。(本)

■報告二

■横に寝そべるけだるい片手操作方式

夜更かしネソベリードリーム

 途中でやめても最後まで続けても、襲ってくるのは虚無感のみ。そんな虚しさ製造装置たるクソゲーに正対すべき理由などあろうか。いやない。横になって片手でやれば十分。クソゲーは退屈な日常の隠喩だ。世間に対し斜に構える夢追い人は、心の中の甘美な夢空間をさまよおう。(高)


■報告三

■真の自分を取り戻すための猫背着座

オールでぺったん娘

 柔らかな股関節を駆使した幼女風のぺったん座りでクソゲーに向かう…。大人の女を演じるのに疲れた彼女が真の自分に戻れる瞬間だ。背筋を伸ばす必要などない。猫背でいい。猫背がいい。没頭するでもなく。ボケッとするでもなく。時間は緩やかに流れてゆく。ああ、もう朝か。(酒)

■報告四

■睡魔の猛攻撃は刺激でディフェンス

うしみつどきはうつぶせドキッ!?

 プレイを始めたら断固最後までいくのがゲーム愛好者の務め。だが相手はクソゲー。油断すれば睡魔が忍び寄る。そこでうつぶせだ。背中がのびて緊張感が生じるのに加え、敏感な女性なら床に押しつけられた乳首に微弱電流が走る。ドキッ! 今の刺激って、もしやクソゲーの愛撫…?(石)

■報告五

■ゲームにガンをとばす超攻撃的姿勢

クソにはウンコ座りMIDNIGHT上等

 目には目を。歯には歯を。いにしえのハンムラビ法典を引くまでもなく、つまらんクソゲーにはウンコ座りこそがふさわしい。両膝を肩幅以上に広げて十分前傾をとり、鑑別所仕込みの鋭いガンとばしを敢行せよ。クソゲー野郎に足下みられるようじゃおしまいだ。なめんなよオラ!(小)

■報告六

■屈辱の放尿スタイルでゲームを挑発

シーシーガールズ夜明け前

 クソゲーをやってて眠たいのは何もプレーヤーだけではない。やられているクソゲー自身も、もう眠たくてたまらないのだ。プレーヤーが挑発的なシーシーポーズで臨めば、クソゲーも刺激されて気合いを入れ直すに違いない。やる側とやられる側の共同作業。それがゲームの真髄だ。(中)

■報告七

■親子の夢を紡ぐ曲芸調の開脚ポーズ

圭子のマタは夜開く

 私が選ぶゲームはいつもクソゲーばかり…と嘆くなかれ。自分がダメなら今度は娘に期待すればいいのだ。出産には股関節の鍛錬が不可欠。クソゲープレイ時には前後開脚で股間をよくのばし、思いを子宮にこめよう。歌姫・ヒカルを生んだのは、恐らくそんな母・圭子の情念である。(遠)

■報告八

■腹筋しながら臨む時間有効活用姿勢

足上げ腹コン筋クリートは宵の口

 クソゲーをやりながら腹筋運動をすればマルチタスク感覚なのです。時間が有効に使えて少し有意義なのです。クソゲーって、ゲームというよりむしろ孤独な夜間筋トレのインタラクティブBGMVなのです。バック・グラウンド・ミュージック&ビジュアルなのです。…今作りました。(南)

■学会主宰より総括

クソゲーに真っ向から立ち向かうための姿勢とは

 ここでは各論説の有効性あるいは有用性、および破天荒とも受け取れる強引さの裏に隠されたちょっぴり気弱な感じ等に留意して論評を加えていくこととする。

 報告1の【真夜中のラッコ族】のズベ〜ッ感は共感できるが、クソゲーに主従関係を強いながら寝てしまうのは敗北ではないのか。

 報告2の【夜更かしネソベリードリーム】のクソゲーとは退屈な日常の隠喩という指摘は見事。ただ、対抗する手段が夢を見ることとはいかんせん情けない。

 報告3の【オールでぺったん娘】は娘とあるが、朝までその格好なのはむしろひねもす縁側でお茶をすする婆さんを連想させる。

 報告4の【うしみつどきはうつぶせドキッ!?】はそこはかとない哀愁が漂う。床に押しつけられた乳首に微弱電流が走るのは単なる欲求不満と思われるため。

 報告5の【クソにはウンコ座りMIDNIGHT上等】は単純かつチャレンジャブルな姿勢という点で抜きん出ている。クソでウンコでなめんなよというダイレクトな下品さもむしろ小気味いい。

 報告6の【シーシーガールズ夜明け前】は別のときにやっていただきたい。

 報告7の【圭子のマタは夜開く】は15、16、17と私の人生暗かった人のことを言っているようだが、そのわりにポーズは能天気に明るいのが度し難い。

 報告8の【足上げ腹コン筋クリートは宵の口】は通販のコピーとしては優秀。

 というわけで今回の推奨スタイルは、クソゲーに対する直裁的取り組み方が下品さを凌駕した【クソにはウンコ座りMIDNIGHT上等】としたい。以上。

■学会うらばなし

●フロム・エー版の読者人気がどうにも上昇しないことに業を煮やした学会では、ついに緊急総会を開催。人気低迷を打開する熱い議論がのべ10時間にわたって繰り広げられた結果、ページタイトルにキャッチコピー「退屈な毎日にうるおいビーム!」をつけることが決定された。
●その際、「我ハコレ!君ハドレ?」「僕って何?」「もう孤独じゃない!」「アイコ16歳」「こだわらいでか!」などの対抗案が却下された。
●今学会の説名には全てオーバーナイト系の時間表現が用いられている点に気づいてもらえないと、学会員としては浮かばれないところ。
●報告2では主宰が珍しく「伝説の横臥バトル」という候補名に拘泥したが、ゲームに造詣が浅い副宰と事務員のアイコンタクトによりレベッカが持ち出され、「ベリーベリーねそべりー」から「夜更かしネソベリードリーム」へと進化した。
●報告3では、ヤング語である「オール」を使いたがる事務員に対して「若者への迎合」「卑屈なもみ手のよう」「早漏からくる自信喪失感の顕著な症例」と批判が続出したようだ。


研究ユニット●94年発足。生活上のナーバスbutグラマラスな主題について精力的but投げやりな探求を行う。副宰が「こんなのやっても金にならんし」と愚痴をこぼしつつ作業中の学会ウェブ版がFM名古屋で紹介されると連絡があり破顔一笑。


生活様式学会トップに戻る