〜第141回テーマ〜
■学会主宰より前口上 |
生活様式学会へようこそ。諸君はムダ毛をいかように処理しているだろうか。それにしてもムダ毛とか呼ばれる毛ってかわいそ。アンタは生きててもムダな存在だよ消えておしまいって言われてるようなものだもの。実際、そうなんだけど。
■報告一 |
T字カミソリで剃るのが爽やかで手軽で安全
【最安式レザー脱毛】
手軽に爽やかにムダ毛を処理するには、T字型安全カミソリでジョリッと剃るのが一番。laser脱毛は高くて無理でも、razor脱毛なら安いから安心。発音しだいでは周りの人が勝手にレーザー脱毛と勘違いして羨ましがってくれるのも快感。垢まで剃れるのも快感。
■報告二 |
つまんで引っこ抜くのが最もドラスティック
【涙の抜本娘】
小泉首相が言うように、痛みを伴わない変革なんて嘘です。脱毛も同じ。指やツイーザーでブチッと根こそぎ引っこ抜くのでないと、抜本的な脱毛とは言えません。冷房の効きすぎで乾きがちな瞳を潤す意味でも、ドラスティックな脱毛が今こそ求められているのです。
■報告三 |
体毛を毛嫌いするなら化学の力で消滅させよ
【溶解人間毛無毛裸毛露】
抜いたり剃ったりしただけでは、憎きムダ毛はまだこの世に存在している。いけない。ムダ毛を毛嫌いする女性ならば、脱毛クリームの化学作用を利用してこの世界から毛を抹殺すべき。闇に隠れて溶かす。あたいたちゃ溶解人間なのさ。早くスベスベになりたい!
■報告四 |
体毛の役割を理解した大人のハサミ整毛方式
【カットちゃん、ケ!】
肌を細菌や衝撃から守るという大事な役割があるのですから、体毛は決してムダな毛ではありません。抹殺など愚の骨頂。ツルツルの肌なんて不自然です。さすがに茂りすぎかな、という部分をハサミで切るぐらいが適切なのです。脱毛より整毛を。敵対より共存を。
■報告五 |
火で毛を焼き焦がす熱くてこうばしい処理術
【燃えろいい女の毛】
ムダ毛を処理すると同時に、暑い夏にふさわしい燃えるようないい女になれる一石二鳥のテク、それが毛焼き。線香に火をつけて処理したいムダ毛にあてるだけで、毛は炭化し体はほてる。陰毛の場合は「焼きイ(ン)モ〜」と口ずさむのもオツ。ああ、こうばしい。
■報告六 |
擦り傷を作るときの摩擦力で毛を肌から分離
【夜明けの摩擦係数μ(ミュー)】
肉を斬らせて骨を断つような捨て身の精神性がお好みの貴女なら、ムダ毛の生えた箇所に意識的に擦過傷を作るアプローチはどうかな。摩擦の力で毛が抜けるし、かさぶたで毛の成長にフタをすることも可能。肌を擦らせてムダ毛を断つ。今年の夏のことわざはこれだ!
■報告七 |
昆虫を脱毛ペットとして肌の上で飼っちゃお
【大好き! ムダゲカミキリ】
カミキリムシを漢字で書くと髪切り虫なんですよ。髪の毛とムダ毛は同じような材質なわけで、ってことは髪切り虫はムダ毛切り虫でもあるわけで、ってことはこの虫を体表でペットとして飼っていれば、格好の脱毛処理になるわけで。バイオの力を信じましょうよ。
■報告八 |
大きな恐怖で毛を抜けさせる涼しげな処理術
【ヌケケケケ 身の毛も抜ける 恐ろしさ】
あまりの恐怖に遭遇すると、人の毛というのは総毛立ったり、白くなったり、抜け落ちたりするそうな。つまり、身の毛もよだつような恐怖を自分に与えてやりさえすれば、何もせずともムダ毛はひとりでに抜けていってくれるってこと。こりゃかなりクールだぜ。
■学会主宰より総括 |
人は女に生まれない、女になるのだ−−とはボーヴォワールの言であるが、たしかに脱毛していないと女なのか男なのかわからないことってあるもんなあ(そんな女、いる?)。さて、総括である。
報告一【最安式レザー脱毛】はなるほど納得の安さ。しかし完全脱毛とはいかずひげ剃り跡状態となってしまう見た目の安っぽさも爆発。アレを何とかして。
報告二【涙の抜本娘】は正論。そうだ痛みを伴う脱毛を! と言いたいところだがしかし、結局はまた毛は生えてくるので実はそれほど抜本的でもないのでは。そこいらへんを首相に問いたい。
報告三【溶解人間毛無毛裸毛露】はおぞましい。溶かすという発想が。とくに毛露はへたすると近所にいそうなタイプで怖かったです。
報告四【カットちゃん、ケ!】はうなずける言説。しかし世の中のコンセンサスは得られにくいだろう。もしもこれが常識となれば堂々とヘアサロンなどでカットしてもらえるだろうに。
報告五【燃えろいい女の毛】はむしろ、いや〜ん毛(もう)。ボーボー燃えたらどうするんですか。
報告六【夜明けの摩擦係数μ】はやや難解すぎるきらいがあるようだ。つーか、わかんね。
報告七【大好き! ムダゲカミキリ】はあまりに楽しすぎる妄想。ペットにしたい。なぜか無性に。
報告八【ヌケケケケ 身の毛も抜ける 恐ろしさ】ははたしてピンポイント脱毛は可能なの? 髪の毛も眉毛も抜け落ちるんじゃ?
というわけで今回の推奨スタイルは、人間と昆虫の共生でムダ毛処理を遂行するという壮大なテーマが熱い共感を呼んだ【大好き!ムダゲカミキリ】としたい。以上。
■学会副宰よりあとがき |
●『生活様式学入門』の文庫化を記念して、残ってるやつをガンガン更新しようと思ったら、管理能力不足ゆえにイラストが全然残ってなかった! ということで、しょんぼりんぐ中。