〜第110回テーマ〜
■学会主宰より前口上 |
生活様式学会へようこそ。諸君は冬はやっぱこれでしょなどと一人ほくそ笑みつつつぶやきながら買ってきたコンビニのおでんのそれも玉子をいざ食さんと欲するとき、どんなふうにそれを食べているのだろうか。ラーメンの中の玉子にも応用可。
■報告一 |
【こわけのスパッと】 おでんは熱い。玉子はデカい。そのまま丸ごと口に放り込もうものなら火傷は必至。口中でもて余すのも必至。おでんの玉子の抱える二大問題の当然の帰結として、箸でこわけに切って食べるやり方が導き出される道理だ。スキャットでも歌いながらスパッといこう。
■報告二 |
【たま子はチョップスティック・マイスター】 玉子は丸くてスベスベしていて確かにつかみにくいけれども、私たちはお箸の国の人なのだから、そんなことにはめげちゃダメ。しっかり玉子全体を箸で挟んで口に持っていき、そしてかじるべき。棒とタマを上手に扱えないようでは、大人の女とは言えないのです。
■報告三 |
【チビ太よ、永遠に】 Mr.おでんといえば、やはりこの人。赤塚不二夫マンガに登場するチビ太だ。彼に敬意を表するためにも、玉子は箸で刺して食いたい。「てやんでいバーロイチキショイ」とつぶやけばより完璧。箸使いが下手でもOKだし、何よりヤツの串おでんは実にうまそうだったもん。
■報告四 |
【黄身汁に、舌キュン。】 勿論おでんはうまい。が、地味な食材が中心でつゆもあっさり味なため、物足りなく感じがちなのも事実。そんなおでんの淡泊さを補完する術として人気なのが、玉子の黄身をつゆに溶かすという一工夫だ。濃厚感が加わったうまさには思わず胸と舌がキュンとなる。
■報告五 |
【ムックムックらんにちは】 ほとんど知られていないが、玉子には殻が二種類ある。一つは外側の硬い殻。もう一つは、俗に白身と言われる部分だ。おでんの玉子は、この第二の殻をむいて黄身を玉として取り出して食う。栄養価、風味などの面を考えると、玉子の真髄はやはり黄身にあるから。
■報告六 |
【食べれるレンゲ】 まずは玉子を半分に割ります。次に中の黄身を食べます。するとちょうどいいくぼみができますから、これを箸か指でつまんでおでんのつゆをすくって飲みながら食べましょう。煮込み具合が不十分で白身に味がしみてない場合でも、食用レンゲ方式なら大丈夫です。
■報告七 |
【和製ロッキーの虚勢】 洋製のロッキーはコップに生玉子を何個も入れてゴクゴクと一気飲みしパワーをつけていた。だったら、ワンランク上の和製ロッキーを目指す者としては、おでんの玉子を何個もゴクゴクと丸飲みしないと。ただし、喉につまらせてグロッキーになっては愚ロッキー。
■報告八 |
おでん現場から驚愕の一報が到着! なんとちくわが玉子を食ったというのだ! さらに驚くべきことに、玉子を食ったちくわを食うと異常に美味だというのだ! 取材班が実際に玉子を入れようとしたところ、ちくわは無惨に破れてしまった! ガセネタだったのだ!
■学会主宰より総括 |
機知は会話の塩であるが、食物ではない−−とはW・ハズリットの言であるが、おでんにおける玉子に相対する際にも、まさしく塩となり得る機知が必需なのだ。いや、塩よりむしろカラシか。カラシはボク、個人的にダメなんだよね。さて、総括である。
報告1【こわけのスパッと】は要するに普通に箸を使って食べようというありきたりな報告とみた。このこわけ者が! と言っておく。
報告2【たま子はチョップスティック・マイスター】はそんなことしてもしも万一つるんと箸がすべって熱い熱い玉子が丸ごと口中に突撃してきたらどうなさるおつもりなのかしら。心配。
報告3【チビ太よ、永遠に】はチビ太のおでんがうまそうである点は激しく同意するも、串ではなく箸で代用するのはいかがか。玉子だけしか刺していないのもやや薄味リスペクトと感じざるを得ず。
報告4【黄身汁に、舌キュン。】はたしかに美味。美味なれど、それはあたかも玉子の黄身を味噌汁の味噌と同レベルで扱うこととなるのではとのわずかな罪悪感を覚えるのだ。覚えない?
報告5【ムックムックらんにちは】の白身=殻説は異端とみなす。
報告6【食べれるレンゲ】は見事だ。よもや玉子がレンゲにヘンゲするとは! 驚くべき効率性。そしてリサイクル志向。そしてネーミングが「ら」抜き。
報告7【和製ロッキーの虚勢】は、熱い、喉に詰まる、消化によくない、そんなにたくさん玉子ばっかり買ったら怪しい、と四重の危険を伴うだろう。
報告8【ショック! ちくわが玉子を食った!?】はガセネタかい。
というわけで今回の推奨スタイルは、白身をレンゲにしてつゆをいただけばいっそう美味というこしゃくな工夫ぶりがラブリーな【食べれるレンゲ】としたい。以上。
■学会副宰よりあとがき |
●久しぶりにテレビの取材を受けたことを記念して冬ネタを更新。寒いですなぁ。