第48回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君は暑いときはコレに限るわよねーとソフトクリームを手に取ったとき、いかなるなめ方をもってしてそれを攻略せしめているであろうか。ぺろりんちょかベロベローンかそれともジュバッジュバッぬぷぷっ、か。ソフトクリーム……それはあなたの習性と品性が問われる甘く冷たい夏の食べ物である。

■報告一



夏をなめあげて

下から上に
向かってレロン
となめる

 クリームに接する舌の表面積と快感の大きさは比例する。この品の魅力を限界まで味わうには、舌先にとらわれることなく、舌の表面全体で、点ではなく面でレロるに限る。当然、舌の方向は下から上。やってみなくてもわかるように、構造上、舌は上から下へはレロりにくいのだった。(呂)

■報告二



くちびるブリザード

歯も舌も使わず
リップで
あむあむと

 「絶対に歯を立てるなよ。名前の通りソフトでデリケートで傷つきやすいものなんだ。上と下のくちびるであむあむあむってやって、いとおしむんだ。吹雪の日みたいに冷えてきゅっと締まるから、イイんだよォ」と彼は言ってた。だから私は忠実に教えを守る。そんな愛の形もある。(望)

■報告三



スパイラル・ベロシティー

回しつつ
らせんの軌跡を
舌でなぞる

 両手でコーンを回しながら、らせん状に巻かれたソフトを舌先でトレース。人生を考え始めた若者のなめ方だ。その心は「隣の芝生は青い」。反対側の方が美味かもと疑い、常にソフトを回して求め続けざるを得ない人間のサガを肯定することから始めよう。舌足らずだが、判ってくれ。(楢)

■報告四



歯だ! 歯を使え!!

他の食べ物と
同じ感覚で
かじりつく

 「生涯一捕手」ならぬ「生涯一育ち盛り」を自負する我々には、ソフトだって大切な養分。食べ物として生を受けた相手に礼を尽くすため、犬歯&切歯でガブッとかじりとり、小臼歯&大臼歯でギリギリ噛み潰そう。虫歯の人は「煙が目にしみる」ならぬ「アイスが歯にしみる」って感じ。(伊)

■報告五



セクシーたれストップ

舌で根元に
溝をつけて
えぐりなめる

 ソフトを食べる際に困るのが、溶けてしたたる白汁。手につくとベタベタしちゃってせっかくの清涼感も台無しだ。そこでテクニカルでアダルトな消費者が選ぶのがえぐり舌。ソフトの根元に舌で溝をつけるようになめていけば時間がたっても汁だれなし。したたりは舌で防御と得たり。(森)

■報告六



ソフト大陸沈没

コーンに
押し込んで
アイスモナカ化

 白く冷たいアイスクリーム大陸は、舌で下へ下へと押しつけて見事に沈没させておしまいなさい。かつては大陸だった白いものがコーンの海の底に達する頃には、既製品のアイスモナカとは格段においしさの違うオリジナルのそれが誕生しています。舌なめずりしてお食べなさいよ。(福)

■報告七



クリーミーなのどごし

口蓋垂に
当たるまで
ディープに挿入

 ビールはグイグイとのどで飲むものだが、ソフトクリームもングングとのどで食べるものだということは案外人口に膾炙していない。大口を開けて一気に口蓋垂、俗にいうのどちんこに当たるまで押し込めば、のどごしのクリーミーさは他の追随を許さない。通は女もちんこで食う。(奥)

■報告八



typeノリタケ

手を叩いた
反動で口中へ
ソフト発射

 灼熱のアスファルト・ジャングルで悠長になめなめしていたら、熱気で一気に溶けてしまうだろうから、そんな時は手首をポンと叩いた反動で飛ばして食うのがベスト。木梨憲武が得意としたアレだ。単なるウケ狙いに見えて実はソフトの上げ底批判という意味もあるとかないとか。(吉)

■学会主宰より総括

ソフトクリームはナメずに一生懸命なめる由

 ここでは各論説の深い示唆に満ちた、あるいは高い見識に基づいた、もしくは長いとぐろに恐れをなしたかのようにも見える主張の根幹部分等に留意して論評を加えていくこととする。

 報告1夏をなめあげてはいかにも正論と思わせる点は認めるものの、はたして味わうことだけがソフトクリームの愉しみのすべてなのかという根本的命題には応えきれていないのではないか。

 報告2くちびるブリザードはその点、ソフトクリームに不可価値を求めていることがよくわかるが、しかしちと求めすぎである。

 報告3スパイラル・ベロシティーの論説には不覚にも深く心を打たれてしまった。常にフロンティアを求めて先へ先へと進んでしまうその姿は、単にぐるぐるしながらソフトクリームをなめているだけなのにひどく美しい。

 報告4歯だ! 歯を使え!!はやっぱりしみるので嫌である。

 報告5セクシーたれストップはテクニカルでアダルトな素敵な奥さんを連想し、やや淫靡に過ぎる感もなきにしもあらず。

 報告6ソフト大陸沈没にはあなたはもしやアミダラ女王? という言葉を贈りたい。意味はさしてない。

 報告7クリーミーなのどごしはあまりにディープで嗚咽が漏れそうである。

 報告8typeノリタケはハズせばすべてパー。

 というわけで今回の推奨スタイルは、その一心不乱な螺旋運動が思わぬ感動を生んだスパイラル・ベロシティーとしたい。以上。

■「学会うらばなし」

●今回はなんとなく学会オフィシャル絵師のオフィシャル絵を入れてみたわけ。副宰としては【夏をなめあげて】のギャルを推したい。お名前は不明だが、クールに対象を見下ろす感じにタマキュン。

●9月になってソフトとはちょっち季節外れでは?との懸念を隠そうとしない読者は多いだろう。無論我々を含む。

●6月、8月、10月、12月と順調に延びてきた当学会オフィシャル単行本(扶桑社)の刊行が、さらに順調に順延の気配。もしかしたら来年1月になるかも。「我々は無能者や?」という問いが主副両宰の胸に去来するようになって幾歳月たったろうか。2000年1月1日発売だったらそれはそれできりがいいが…。


絵●龍野宏幸

研究ユニット●94年発足。生活上のグラマラスな題材について精力的but投げやりに探求中。単行本用にかつての研究を読み返しつつある主宰&副宰だが、あまりのいいかげんさに唖然&呆然but微笑。本能でプレイすることの大切さに膝と肘を打った。


生活様式学会トップに戻る