〜第124回テーマ〜
■学会主宰より前口上 |
生活様式学会へようこそ。諸君は空を飛ぶとき、どのようなポーズを取るのがお好みだろうか。無論、自力で空を飛べる人間はあまり多くないと思うので、これは空想上のお話もしくは夢の中の出来事とでも解していただこうか。空しい?
■報告一 |
【もろ手でダイブ・トゥー・ブルー・ス海】 青さ。広さ。爽やかさ。空と海には共通点が多い。「スカイ」には「海」(カイ)が含まれもする。とすれば、空を飛ぶ際の姿勢にも海を泳ぐ際の姿勢との共通点があって当然。両手を頭上いっぱいに伸ばして海に飛び込むように、空にもダイブする姿勢が必要な道理である。
■報告二 |
【ボク、フライング・シュワッチマン、サー】 なぜ飛ぶのか。飛べるのか。それは正義の味方だからだ。拳は勿論グー。片手を前方に伸ばし、もう片方の手はパンチを打つ前のボクサーのように曲げて引いておくのが肝。こうしておけば、飛行姿勢からすぐ怪獣を攻撃するモードに移れるのである。シュワッチ!
■報告三 |
【気をつけ〜ハイ!】 進化した人類にとって飛行は何も特別なことじゃない。歩くのと同様、日常茶飯事の行動だ。特別な姿勢も必要ない。風圧で自然と手が体側に伸びるのにまかせて高度を上げればいいのだ。気をつける必要もないが、未進化人には一応気をつけの姿勢と説明しとこう。
■報告四 |
【人面鳥はばたく】 人は飛行機になりたいのか? NO! 人は鳥になりたいのだ。いかに筋肉の組成が違おうとも、鳥のようにはばたいて、あの大空に翼を広げ、飛んで行きたいよなのだ。不格好に見える努力を惜しんでいては、哀しみのない自由な空へ飛び立つことなんてできやしない。
■報告五 |
【平泳ぎ世界最高記録!?】 手足を左右対称に動かし、カエルが泳ぐような形で飛ぶのが理想だ。飛行の楽しみをゆっくり味わうには、他の泳法に比べてスピードの出にくい平泳ぎが最も適しているし、空中という最も高い地点での平泳ぎ記録を樹立するという意味合いもわりかし「買える」ね。
■報告六 |
【浮き浮きフワッチング】 古今東西の挑戦者の例が示すように、残念ながら人は筋肉では飛べない。飛べるとしたら、それは精神的なエネルギーによる場合、つまり、精神修行で気を高め、座禅を組んだ状態でふわっと浮かぶ空中浮揚しかない。都合がいいことに、この浮揚術は説明が不要だ。
■報告七 |
【弁髪の飛行士】 例えばジェットと言われても機構が想像できないが、プロペラと言われれば合点がいくのではないか。そう。編んで長くたらした弁髪をプロペラのように高速回転させる飛び方こそ、人の頭にピンとくるスタイルである。タケコプターっぽいから子供受けもバッチリ。
■報告八 |
昔々ある男がおった。あるとき男がイキのいい天然うなぎをつかもうとすると、うなぎがつるっと上へ逃げてしまった。さらにつかもうとするとまたつるっ。何度も繰り返すうち、男は天まで飛んでいたそうな。「うなぎ登り」の由来として伝わる好エピソードじゃ。
■学会主宰より総括 |
臆病でためらいがちな人間にとっては、いっさいは不可能である、なぜならいっさいが不可能なように見えるからだ──とはウォルター・スコットの言であるが、けだし名言。名言ではあるが、だからといって空を飛ぼうと屋上から足を踏み出してみたりするとあとで痛いよね。さて、総括である。
報告一【もろ手でダイブ・トゥー・ブルー・ス海】は、「スカイ」には海が含まれていたのですかい、という点のみ感心した。あとは、ダイブきてますねという感じ。
報告二【ボク、フライング・シュワッチマン、サー】は、ウルトラマンってファイティングポーズってやつを誤解してるんじゃないのボクサーだって最初からパンチしてるポーズなんか取らないでしょ腕はいつでもパンチを繰り出せるように引っ込めといて殴るときに伸ばせばいいでしょうにだからゼットンなんかにやられちゃうんだよキミはという言葉を贈ろう。
報告三【気をつけ〜ハイ!】は、休めのポーズの方がナチュラルではないのか。そのへんどうなのか。
報告四【人面鳥はばたく】は、その歌はドーハの悲劇を思い出す。
報告五【平泳ぎ世界最高記録!?】は、買えるとカエルのもじりに気づくまで24時間かかったという意味で世界最高記録だったよ…フフ。
報告六【浮き浮きフワッチング】は、浮いても1センチくらいなんでしょ。空飛んでないじゃん。
報告七【弁髪の飛行士】は、なぜか胸に迫りクルものがある。イッツ・ソー・クール! くるくるまわーる! いぇーい!
報告八【うなぎ登りは天然に限る】は、知りませんそのエピソード。
というわけで今回の推奨スタイルは、その空々しいまでのクルクルパーぶりが空を飛ぶという不可能きわまりない行為にふさわしいと納得せざるを得ない【弁髪の飛行士】としたい。以上。
■学会副宰よりあとがき |
●今回も、テキストデータがどうしても見つからず、床に埋もれていた主宰の原稿をわざわざタイプし直しての更新。俺ってやっぱ生活様式学会が好きなんだなぁ、と改めて感じた次第。
●小さい頃は、全力で手足をバタバタ動かせば、地上10センチぐらいなら浮いて飛べると信じていました。いや、今でも信じています。いや、それはウソです。