□■今週の学会員
・モックン  缶チューハイのCMで今後の肥満化を予感させた。
・ヤックン  覚えにくい名前のスープのCMを田原から奪った。
・フックン  エルグランドのCMからいつのまにか消えていた。

完ア学会へようこそ。「レストランのウェイターをやっていますが、何度やってもテーブルの拭き方が下手だと言われます。コツみたいなものはないのかなぁ」と悩む男子に学会なりの指針を与えるため、今回も3人の精鋭学会員が集まった。プロのウェイターがテーブルを拭く場合にふさわしいダスターの軌跡とは?

□■決勝トーナメント

□■予選落ち

・ダスターの面は使わずへりで拭く。
・ダスターをホウキのように扱って食べ物かすなどは下に落とす。
・ダスターを指に巻いて拭く。
・ワイパー方式。
・破線を書くように。
・深夜難解なメイズにチャレンジする独身パズラーのように。
・ダスターを舞い散る木の葉のように上から落とす。
・ナスカの地上絵をなぞるように。


□■今回の決議〜
テーブルは「己の道」スタイルで拭くのが望ましい。

テーブル拭きと子守歌の間をつなぐ関係とは

モ●では早速、これぞと思われる説を開陳しあうとしよう。

フ■拭きは、子守歌と見つけたり。
ヤ▼のっけから踏み込んだな。しかしてその実態はなんぞや。
フ■様々な料理を載せるという重労働に勤しみ疲れたテーブル様が本来の載せ機能を回復するには充分な睡眠が必要だ。それを手助けするのがウェイターの任務。即ち、テーブル拭きはダスターが奏でる子守歌でなければならない。つまり、望ましいのは、ダスターでZZZを連続トレースしていくスタイル、即ち「ムニャムニャ」だ。
モ●ほう。テーブルを擬人化した組み立てには甚だ疑問が残るが、結論としては至極ノーマルだな。
ヤ▼テーブルに人格を認めるなら、ダスターで「ごくろうさま」とねぎらいメッセージを書くのはどうか。書の心をこめる…名付けて「莫山先生の愛弟子」。書く語を「いらっしゃい」に置き換えれば、客への歓迎を表現できるやもしれぬ。
フ■却下だ。それでは必ず一度も拭かれない死角が発生するはずだ。

「∞」の読み方はやはり「ムゲンダイ」なのか?

モ●では、横8の字を描くようにダスターをすべらす「挑発∞」はどうか。次第に8の字を大きくしていけば死角は発生しないはずだ。

フ■却下だ。なぜならば、その拭き方には無駄がある。軌跡が交わる回数が多く、効率が悪いはずだ。

ヤ▼無駄のない拭き方として私が期待するのは「大日本除虫菊」だ。蚊取り線香の火のように、テーブル外側から中心に向かってらせんをまくように拭いていくのだ。

フ■むしろ中心から外側に向かう方がよいな。テーブルに食べ物かすがあった場合、中央に集めるより外側に押し出す方が望ましいはずだ。残された固形物が迷わぬよう外に導き出す思いをこめた「アリアドネの糸」。ギリシア神話だ。

モ●なるほど。では「アリアドネ〜」と「ムニャ〜」の勝負は?

ヤ▼難しいが、決め手は水分痕だ。ダスターの水分がテーブルに残る拭き痕は目立たぬ方がいい。そして、テーブル辺に平行に拭く方が痕は目立たないのが道理である。後者では斜めの軌跡が生じる以上、前者を優勢勝ちとするのが妥当だ。

フ■了解だ。ではここから視点を変えて新次元に踏み込もう。思うに、我々はダスターを移動させることに偏っていたようだ。

モ●ふむ。森尾由美の洗剤CM「こすらない〜アワワワ〜」が参考だな。素材の吸水性にまかせた、いわば「タオルドライ」。「こする」から「吸い取る」への転回だ。

ヤ▼しかし、醤油などのこびりつき汚れには全く歯が立たない。

フ■そうか。我々はダスターの「サラッと移動」にとらわれていた。

モ●ふむ。タワシのこすり方が参考になるな。しつこい汚れを落とすためダスターを小刻みに回転させながら移動。いわばマンガ的な「じんじろげ」を書くようにだ。

ヤ▼うむ。汚れ落とし効果が高い点で「タオルドライ」は上回る。

フ■もう一つの軸は「青春片道キップ」か。我々はダスターの一筆書き的移動に偏っていたきらいがある。これを廃し、端まで拭いたらダスターを引き上げまた同じ辺に戻って拭き取りを開始。軌跡を一定方向に統一すれば、水分痕のつき方にも美しさが生まれそうだ。

モ●何事にも一途な青春時代の清さを表した点はよし。だが効率はどうか。一拭き毎に無駄な空リターンが生じる悠長なやり方が忙しい店に適しているとは思えぬ。

ヤ▼無駄を出さずしかもシンプルということなら、「己の道」だ。左から右端までいったら少し下に移動し、そこから左端まで、また少し下に移動してそこから右端まで、を繰り返す。「己」という文字が何度か現れるうちにテーブル拭きが終わっている寸法だ。

万里の長城にはじんじろげのパワーも通じず

フ■万里の長城を思わせる雄大さもある。勿論「青春〜」より上だ。

モ●実は「じんじろげ」はテーブル全体に適用となると疲れることこの上ない。実際はあくまで部分拭き用の手法だからな。では最後は「アリアドネ〜」と「己」か。

フ■差がない以上は調子よく拭けるかどうかのリズム勝負だ。「己」では横方向のロングと縦方向のショートが交互に繰り返されるため、結構リズムに乗りやすい。一方「アリアドネ」は各ストロークの長さが全て違うため、リズムに乗り切れない恐れありだ。どうだ。

モ●実に難しい判定だが、規則性への信頼を大事にして同意しよう。

ヤ▼大した差がないことを確認しつつ「己の道」に軍配を上げよう。

フ■両説の健闘を称えて、握手だ。


□■今週のゲストコメンテーター

ファミレスチェーン広報・Iさん

 大事なのはダスターの適度な水分ですね。乾きすぎだとガムシロとか取れない汚れがありますから。流れとしては、まずトレイを置ける分のスペースを拭く→そこにトレイを置き、残ったグラスやおしぼり等をのせる→テーブルを拭く→テーブル備えつけの砂糖や塩等をどかして拭く→トレイを持ち上げた状態で軽く確認の一拭き、というところです。さすがにダスターの軌跡までは決めていませんが、あまり円状には拭かないでしょうね(笑)。




「完全アルバイター養成学会」はフロム・エーThursdayで発表したものです。
議事進行/根岸菜穂子 議事録/高井ジロル
 



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