第52回テーマ

■学会主宰より前口上

当学会へようこそ。諸君は最近、温泉に行っているだろうか。ナニ、行った?羨ましい。ということではなく温泉といえば卓球である。つい我を忘れて魂込めたスマッシュを決めてしまった瞬間、諸君の浴衣はどうなっているのか。今年の秋冬〈浴衣卓球モード〉はこんな着こなしで。

■報告一



BCGはほてりがち

両袖を肩まで
まくれば

引っかかり
問題が解決

 浴衣卓球における最大の障害はヒラヒラした袖にある。ここ一番のポイントで卓球台に袖が引っかかり万事休すという悲劇を繰り返

す浴衣選手は多いはずだ。そこで袖まくり。機能性UPは勿論、湯上がりの二の腕に浮き上がる予防注射跡が艶かしい必殺兵器となろう。

■報告二



半身フリーダム宣言

露出付き
尻ばしょりで

裾踏みつけ問題
が解決

 浴衣卓球における最大の障害はヒラヒラした裾にある。ここ一番のポイントで自分の裾を踏んづけてすってんころりんという悲劇を繰り返す浴衣選手は多いはずだ。そこで尻ばしょり。機能性UPは勿論、パンツからはみ出すポロリが敵の脱力を誘う必殺兵器となろう。

■報告三



緑! 秋の半裸祭り

遠山の金さん
ポーズを

おとりに使う
高度戦略

 紅葉が深緑の卓球台に映えるようになれば、もう秋。祭り太鼓の名手と言われた昔を思い出してエイヤと肩を出さずにはいられない。鍛えた上半身を見せつけ、「この桜吹雪が目に入らぬか」とキメた

ところで姑息な変化球サーブを繰り出せば勝ちだ。太鼓判を押すね。

■報告四



上がりナデシコ緊縛変化

和服を知悉した女性が選ぶ伝統のたくしあげ

 本気で何かに打ち込む場合、古来より日本女性は和服の袖をたくしあげて臨んできた。緊迫感漂う温泉卓球でもきつくたすき掛けを

施すのは、大和撫子の血を引く者のいわば義務なり。たすき掛け用の2本目の帯は友人から友人へと慎重なたすきリレーで借りるべし。

■報告五



ミニの浴衣美人

丈の短縮で
太股露出を狙う
和洋折衷スタイル

 ジャパネスク一点張りでは、欲張りな現代女性を満足させることなど不可能。浴衣を何度か折り込んで帯で締め上げ、西欧のミニスカート風にアレンジすれば、そんな彼女たちのお洒落心だけでなく、男性陣の浴場上がりの欲情も刺激することは確実。のぼせさせとけ。

■報告六



ちまきラドン

浴衣の本質を
見抜けば

帯は頭に締める
が勝ち

 きちんと帯を締めていても、卓球をしていればどうしても浴衣の前がはだけてしまう。これは自然の摂理だ。だったら最初からはだけさせとけばいい。帯は外して鉢巻きにすればいい。卓球怪獣ラド

ンに変身すればいい。ラドン温泉で思いついた妙案の連打である。

■報告七



しろまえだのスマッシャー

相手を疑心暗鬼
に導く

前後逆転
ダイナミズム

 勝ちたいなら浴衣を後ろ前に着ること。一見普通の浴衣選手なのによく見ると何だか不自然だ……と敵が疑心暗鬼に陥ってしまえば、スマッシュがビシバシ決まるのも当たり前だ。胸元チラリの心配がないから、相手の剛球が敏感な部

分に侵入するのも防げるってわけ。

■報告八



ぬごとき帯一本で充分たい!

邪魔な衣は
脱ぎ捨てて

王者の誇りを
強調せよ

 「貴様ごときを叩き潰すなど指一本あれば充分」。勝負には不可

欠なこの姿勢を温泉卓球に敷延すれば、浴衣を脱ぎ捨て、帯一本し

か巻かない着こなしに行き着く。邪魔な浴衣を全廃したことよりも、帯がチャンピオンベルトの意味を持つことの方がより重要と心得よ。

■学会主宰より総括

浴衣は卓球の邪魔か必携アイテムか

 涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味はわからない、とはゲーテの言だが、浴衣を着て卓球をした者でなければ温泉の醍醐味もまた堪能できはしないだろう。ここではそんな意も汲みつつ、各論説に論評を加えていくこととする。

 報告1BCGはほてりがちは両袖をまくるのはいいが、二の腕のBCGに艶っぽさを感じ取るのは一部特殊嗜好者に限られた感受性ではという点が気がかり。

 報告2下半身フリーダム宣言は裾をはしょるのはいいが、パンツからはみ出すポロリはむしろ邪魔であるか急所開陳という危険性を伴うのでは以下同文。

 報告3濃緑! 秋の半裸祭りは遠山の金さんが桜吹雪を見せながら祭り太鼓を叩くのか。なぜ?というあたりがよく把握しきれなかった。

 報告4湯上がりナデシコ緊縛変化は「帯に短したすきに長し」といわれる帯をたすきに利用している点、実は伝統主義に反しているのではと懸念する。

 報告5和ミニの浴衣美人の主旨は好ましいが、薄っぺらい木綿素材の浴衣のこと、かなりのサービス度に発展しそうだ。もう幾分かのチラリズム的配慮を求めたい。

 報告6はちまきラドンはただの酔っぱらいオヤジと思われること必定。

 報告7うしろまえだのスマッシャーはパフォーマンス性と浴衣のプロテクター化という観点の提示に心を動かされた。

 報告8うぬごとき帯一本で充分たい!は本当はただの露出癖の発露では?

 というわけで今回の推奨スタイルは、温泉卓球時のユニフォームとして定着の可能性もありと思わせるうしろまえだのスマッシャーとしたい。以上。

■「学会うらばなし」

●なぜ季節感のないテーマをわざわざいま入れたかというと、第3次卓球ブームが到来しつつあるという情報をキャッチしたからである。副宰は自身の卓球能力に自信があるため、ブームの到来を大歓迎しているわけである。


絵●龍野宏幸

研究ユニット●94年発足。生活上のグラマラスな題材について精力的but投げやりに探求中。差別化が進んでいるサッカーTV放送界の序列では、ヴァイシャに甘んじる主宰を尻目に、副宰はクシャトリヤへと階級を上げた。ウッシッシ。


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