〜第120回テーマ〜

■学会主宰より前口上

生活様式学会へようこそ。諸君は「三度ぶつけ」という遊びをご存じか。知らないなら「カタキ」は? よけい知らないよとおっしゃるならこの際、ドッジボールでもまあ可。要は至近距離からボールを投げつけられたとき、どうよけるかを問いたいのだ。いまこそ!

■報告一

【少年ジャンプ】

開脚跳躍ポーズでアクティブにエスケイプを

 勢いよくピョーンとその場で開脚ジャンプを敢行し、派手に開いた股下を通すようにしてタマをよけるのが、人生上最も活発でマンガ好きで友情や勇気や勝利が好きでもある少年時代にふさわしいスタイル。たまに自分のタマにタマがヒットしてしまうのはご愛敬。


■報告二

【トータス足元は死んでいる?】

手足をひっこめた亀のようにうずくまるべし

 鈍重な少年が手も足も出ない危険に遭遇したときは、小さくなって足元にうずくまるに限る。どうせ動こうとしてもびびって動けないし、憐憫の情に訴えれば相手の手加減が期待できるし、仮死状態に自分を導けば苦痛を感じずにすむのだ。偉大な亀の生き様に学べ。

■報告三

【おまえにくの字】

狙われやすい体の中心部分を人文字で空洞化

 多くの場合、投げ手は体の中央部、つまり腹の辺りを狙ってくる。ならば、腹の辺りを空洞化すれば、タマが当たることはないわけである。タマのリリースの瞬間に体をくの字にすればいいわけである。見事に投げ手が術中にはまった暁には、くくくと冷笑を投げるべし。

■報告四

【いなしなタコモーション】

軟体動物に範を仰ぐふにゃふにゃ上体ひねり

 多くの場合、投げ手はここぞとばかりに強烈なタマを放ってくる。
そんなときに有効なのは、相手の攻撃をひょいといなすアプローチだ。自分をタコのような軟体動物と見なし、ふにゃふにゃと上体をひねればタマはまず当たらない。柔よく剛を制す。っていうか酔拳?

■報告五

【なぜエビぞらない?】

何とかしてタマが止まって見えるようになれ

 タマに当たるのはそれが動いて見えるから。止まって見えるようになりさえすれば絶対に当たらない。エビぞって手を回したって大丈夫だ。そこで、古くは川上哲治、最近ではキアヌ・リーブスが会得したこの術。使い方に迷ったときは、白ウサギの後をついていけ。

■報告六

【威嚇獣トンデコーン】

相手に近づくことでよける逆説的アプローチ

 投げ手から中途半端に逃げると、かえって照準を合わせやすくなってしまう。近づくのだ。手負いの猛獣が襲いかかるようにぐおーと接近すれば、有効角度が狭まって投げにくいだけでなく、相手がびびって腰を抜かす可能性も高い。おそらくタマは飛んでこーん。

■報告七

【ヒーローは回るよどこまでも】

演出の存在を信じてバック転の連続で逃げろ

 もしキミが正義のヒーローと呼ばれる種類の男なら、スタントマン仕込みの見事な連続バック転で回って逃げれば安心。演出上、タマは絶対に当たらないことになっているからだ。そうでない場合は、目を回らせて気絶し、薄れる意識の中でヒーローになった夢をみよ。

■報告八

【消えた転校生】

衣服を囮に姿を消して逃げる忍法早脱ぎの術

 バスッ! 渾身の力を込めて放たれたタマが獲物の体を確かにとらえた。満足げに近寄る投げ手。だが、そこには脱ぎ捨てられたばかりの生温かい衣服が……。ふと頭を上げればパンツ一丁で走り去る影。やられた! きゃつめ、抜け身の術を操る転校生忍者だったとは!

■学会主宰より総括

 急がず休まず──とはゲーテの言だが、これは人生についてのコツを語ったもの。三度ぶつけにおいてはむしろ、当たらずさわらず、であろう。つーか、それがルールだっけ。さて、総括である。

 報告一【少年ジャンプ】の気持ちはわかる。わかるが、マンガ的跳躍力を備えている人間など現実にはいやしないということを痛感させられるあのタマ突き事故時の衝撃は、愛嬌を超えて、ただもう萎え萎え。

 報告二【トータス足元は死んでいる?】は、悲しすぎるよ、悲しすぎるんだよ、亀。

 報告三【おまえにくの字】の技としての有効性はまずまず認めよう。しかしフェイントにはかなり弱そうである。その場合の投げ手の嘲笑が目に浮かぶ。

 報告四【いなしなタコモーション】はまず酒、もしくは酢を飲んでおくことから始めなくてはならない。気分的に。

 報告五【なぜエビぞらない?】はワイヤーが必要である。あと、マシンガン撮影技法も。

 報告六【威嚇獣トンデコーン】は逆転の発想。どう考えてみても窮鼠猫を噛むがごときかわいさが捨てがたく心惹かれる。威嚇獣などと名乗る虚勢ぶりも含め。

 報告七【ヒーローは回るよどこまでも】は、常々思っていたんですけど、ほんとになんでバック転で逃げてて当たらないんですかね。当たるだろ、絶対。

 報告八【消えた転校生】はどこか別次元の世界のお話らしい。下手にコメントしないでおこう。

 というわけで今回の推奨スタイルは、開き直りともやけくそとも思える信念のみで逃げから攻めに転じるというその発送があっぱれだが一角獣ユニコーンの優雅さはまるでない【威嚇獣トンデコーン】としたい。以上。

■学会副宰よりあとがき

●中学校の同級生がテレビやラジオで大活躍しているのを知って感激、というわけでなつかしネタを更新。すっかり出世したなぁ、山田…。
●イラストのスキャンがなんか汚くなっちゃったけど、ま、いいすよね。

●50人アンケートの結果。
少年ジャンプ 14
トータス足元は死んでいる? 6
威嚇獣トンデコーン 5
いなしなタコモーション 4
おまえにくの字 2
なぜエビぞらない? 1
ヒーローは回るよどこまでも 0
消えた転校生 0
その他 18

50人アンケートの結果。「よけずにただ逃げる」と答えた工夫レスな人が結構多かったのには少々失望。その他では「許してと懇願」「買収」「昼休み終了のチャイムを真似」が目立った。



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